もう想い出話にしてもいい頃だと思う。
昔、冬の月山で死ぬ目に遭ったことがある。
若気の至りで自分の運転を過信していた。
地元民でも敬遠する真冬の月山越えを面白半分にやってしまったのだ。
車はM社のフルタイム4WDバン、勿論四輪スタッドレスだ。
前方を走る除雪車をパスしようと対向車線に出た時だった。
ぅわぁ、デカい!(そう、豪雪地帯の除雪車は全長10m以上はあるバカデカさなのだ)
慌ててアクセルを踏み足した瞬間、リヤが滑ってコントロールを失ってしまった。
アクセルを一定に戻して、スピンしないよう必死でハンドルを切った。
まずい、正面からトレーラーが迫ってくる!!
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車は3度ケツを振ってコントロールを取り戻した。
...しかし、もう間に合わなかった...除雪車と横並びで、車線に戻れない。
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いいコトをお教えしよう。
絶体絶命、最期の瞬間は無音のスローモーションになる...のは本当だ。
ソコには何故か人生を走馬灯のように思い返せる程のゆったりとした時間があった。
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対向車のドライバーの顔がハッキリ見えた...全く動じていない。
避ける素振りも無く、恐らくクラクションすら鳴らしていない。
隣の除雪車のドライバーは見えないが、進路を乱すことも無く一定速で走行している。
ああ、雪道に慣れた人達は流石だなあ...他人事のようにしみじみと感心した。
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もうひとついいコトをお教えしよう。
人は死を覚悟すると、平常では考えられない位大胆不敵になる。
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除雪車は背が高くて巨大なF1カーの様な形をしていた。
細長いボディから巨大なタイヤがニョッキリ生えているのを想像出来るだろうか?
私は咄嗟に除雪車の前後のタイヤの間に入り込むように、ピッタリと並走した。
前輪に突っ込んでも、後輪に踏まれても「サヨナラ」だったろう。
結局...助かった...
多分この時に人生全ての運を使い切ったことは想像に難くない。(笑)
まあ、コレを教訓にして一つ言えることがある。
君子、真冬の月山に近寄らず